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こをんな人にオススメ
・考える深い話が好き
・心理描写を楽しみたい
・ダークな話が読みたい


あらすじ・内容
施設で育った刑務官の「僕」は夫婦を刺殺
した20歳の未決囚・山井を担当している
一週間後に迫る控訴期間が切れれば死刑
が確定するが、山井は何か隠している──
どこか自分に似た山井と接する中で
「僕」が抱える、友人の自殺の記憶や
大切な恩師とのやりとり、自身の混沌
が描き出される
重大犯罪と死刑制度、生と死に向き合う
その先にある希望はあるのか!?





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ネタバレ・感想
今回も重く中村文則らしいダークな作品
心に何らかの闇を持っている登場人物たち
が物語を展開していく


刑務官は様々な葛藤があるだろうし
本当に大変な仕事だと思った
中でも主任が語る苦悩がつらかった
被害者の遺族の立場であれば加害者に
対して情が湧く事はまず無い
しかし、死刑執行をする側からすれば
死刑制度は大きな問題を抱えていた
そこまで刑務官に負担を掛けるのは
おかしいと思った
死刑制度自体には反対ではないが
世論やマスコミに影響される不可解な
判決は無くして欲しい
何の為に死刑があるのかを考えされられた


幼い頃の記憶や友人の自殺、配管の水の音
など水の描写が“死”や“暗さ”を表現していた
留まらず動いていた水がテーマである“命”
を表していた


反対に施設長は“生”や“希望”で“命”を描く
印象的だったのは施設長が発した言葉

「現在というのは、どんな過去にも勝る。
そのアメーバとお前を繋ぐ無数の生き物
の連続は、いいか?全て今のお前のため
だけにあったと考えていい」

これは“生”や“命”をリアルに考えさせ
今の大切さを教えてくれた
施設長の存在は「僕」にとって大きく
いい影響を与えてくれていた

また、卒業式のエピソードには感動した

「僕は・・・・・・」
「孤児でよかった」
「あなたにあえた」

これには施設長も涙していたし
こっちも読んでいて涙ぐんだ(;´д⊂)


施設長が「僕」をいい方向へ導いたように
「僕」は山井に対して接していく
ラストの山井のひらがら混じりの手紙
には希望が持てて良かった


主人公の「僕」は不安定で共感できる部分
を感じる事ができた
犯罪や自殺を犯してしまうのはなぜかか?
「僕」と山井の違いは施設長の存在
「僕」と真下の違いは恵子の存在だった
生い立ちや境遇も理由の一つだと思うが
不安定な精神を支えてくれる人たちの存在
があるがどうかが大きいと思った


命をテーマにした難しい話だったが
施設長や「僕」の言葉は心に残った
誰にでも憂鬱な夜はあると思う
読んで良かったと思えた1冊でした

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