こんな人にオススメ
・サクサク読みたい
・ミステリーが好き
・面白い短編集を探している
あらすじ・内容
患者の搬送をなぜか避ける救急隊員の
事情が胸に迫る「迷走」
娘の不可解な行動に悩む女刑事が
我が子の意図に心揺さぶられる「傍聞き」
女性の自宅を鎮火中に、消防士が驚き
の行動に出る「899」
元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」
全く予想のつかない展開と人間ドラマが
見事に融合した4編か描かれる
2008年日本推理作家協会短編部門受賞!
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ネタバレ・感想
短編集なのにストーリーがしっかりして
どの作品も伏線回収が見事だった
丁寧に作り込まれていて面白かった
ミステリー要素だけじゃなく人間ドラマ
もあるし満足な1冊になっています
「迷走」
室伏が電話を掛けている相手は誰なのか?
なぜ葛井を病院に搬送しないのか?
ミステリー要素があって面白かった
検事の葛井と医師の増原の間では増原が
起こした事故の事で何らかの取引をして
いるのは明らかな状況だった
葛井と蓮川の緊迫したシーンや救急車が
迷走するシーンは展開が気になり一気読み
室伏は復讐の為に救急車を迷走させて
いたのではなく、電話の相手である
増原を助ける為だった!
(増原は発作で倒れていた)
救急車を運転していた永野に同じ道を
通るなと指示をしているヒントもあり
伏線回収もしっかりしてスッキリした
ラストの蓮川のセリフ
「隊長、あんまりかっこつけないで下さい」
「マニュアル無視の責任を一人で負って
もらえば、それはありがたいですよ。
ですが、ずっと黙っていられるのは
やっぱり困ります」
には上旬と部下の関係以上の繋がりを
感じたし、明るい未来が想像できた
室伏はおそらく笑っていたし
蓮川を公私共に認めた瞬間だった
室伏の正義を貫く姿が最高に格好いい
「傍聞き」
タイトルにもなっている「傍聞き」
確かに直接物事を聞くよりも人伝えに
聞く方が不思議と信憑性がある
ストーリーの展開が読めずハラハラしたが
見事に作り込まれた良い作品で面白かった
主人公の羽角と娘・菜月の親子ケンカ
はただの親子ケンカでは無かった
菜月の手紙での時間差攻撃には参るが
それは母への手紙ではなく
フサノへのメッセージだった!!
「何時まで泥棒おっかける気なの?」
「なんでで空き巣がそんなに好きなの?」
「コソ泥と娘どっちが大事なの?」
一見、フサノに対して無関心に見えたが
実はとても気を掛けていた
フサノを安心させる為にわざとフサノの
家に手紙が届くように住所を細工していた
菜月の策士ぶりと優しさが良かった
今後の菜月の成長が楽しみすぎる
また、ネコ崎の不安を煽る誘導が巧みさ
が作品のいいアクセントになっていた
自分が斉藤警官だったらハラハラして
同じようにしていたかもしれない
心理描写も十分に楽しめて良かった
「899」
消防士が火災現場で遭遇した不可解な
出来事が描かれる
諸上は火事になった新村の家の中で乳児
のあいりを捜索するが、姿はどこにもない
4ヵ月の乳児が自分で動ける訳でもなく
不思議に思う
しかし、後から部屋を捜索した笠間が
あいりを発見し救助した
あいりはどこにいたのか?
諸上が浮き足立って見落としたのか?
後日、諸上は新村が働いている蕎麦屋
を訪れる
新村はあいりを連れて働いていた
その時、偶然にあいりの指と指の間の腫れ
を見つけ諸上は全ての真相に気付いた
新村はあいりを虐待していた
それに気付いた笠間は“あいりの価値”を
新村に教える為にあいりを安全に細工して
クローゼットの上に隠した
・ビニール袋
・トルクレンチ
・夜中の異常な泣き声
伏線も回収されてスッキリした
新村は娘の大切さを理解した
虐待が二度と起こらない事を願いたい
「迷い箱」
出所直後の元受刑者に住居を提供する
再生保護施設を営む結子が主人公の話
元受刑者・碓井がいなくなった理由は
何だったのか?
結子が1週間テレビに出るという場面から
碓井がテレビを見ている事は推理できた
碓井自身がテレビ番組という「迷い箱」
の中で結子を眺めていた
そして、自分自身をこの世界から捨てる
という“死”を選択をする
碓井や結子の気持ちが切なかった
どの作品も物語に引き込ませる力があった
短編集なのでサクサク読めるのも良かった
ミステリー要素も十分満足な1冊てした
他の作品も是非読もうと思います!
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