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こんな人にオススメ
・暗い話が好き
・一気読みしたい
・心理描写を楽しみたい


あらすじ・内容
恋人の美紀の死を周囲に隠しながら
今でも彼女は生きていると語り続ける男
彼の手元には黒いビニールに包まれた
謎の小瓶──。それは純愛か?狂気か?
喪失感と行き場のない怒りに覆われた
青春を悲しみに抵抗する「虚言癖」
の青年のうちに描く
野間文芸新人賞受賞作

     



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ネタバレ・感想
まず、死んだ美紀の小指を瓶に
入れているのが衝撃的だった(;゚∀゚)
狂っているのか?とも思ったが
中身がバレるのを異常に恐れていたし
主人公は“普通ではない事”というのは
しっかりと理解していた
いびつで歪んだ愛に狂気を感じたが
それだけ美紀に対する想いが強かった


本作も中村ワールド全開で暗く
生きづらそうな主人公の狂気が描かれる
虚言癖があり、頭がおかしく感じるが
それは、わざとそうなるよう演じていた
周囲に本当の自分を見せず不安定で
危うい主人公の心理描写が巧みだった


小指を瓶に入れたのは
・喪失感を埋めるため
・永遠の別れを拒むため
・一緒に居たかったため

美紀の死という出来事に対して
心を落ち着かせる為の行動だった
小指を通して心を正常に保っていた


幼少期に親を亡くす
→感情表現が上手く出来なくなる
→典型的な言動をとる
→周りが喜び、自身も幸福感を得る
→何かを演じながら生きるようなる
→そんな中、美紀と出会う
→美紀が喜ぶ彼氏を演じる
→幸福感を感じる(本当の自分)
→光(美紀)を失い、暗くなる
→美紀の死を受け入れることができない
→本当の自分が分からなくなる
→あえて光を遮る選択をする


上手く生きる為に演じる癖がついていた
それに加え美紀に依存してた事から
“美紀の死”に対して気持ちの整理が
できずに生きているように周囲に話す
その結果、虚言癖になってしまった


そして、瓶の中身と一体化するのは
主人公にとっては幸せだったのか?
これは究極の愛情表現ではあり
主人公の狂気でもあった
美紀の死をあえて克服しない事で
完全な暗闇を選択する


最後の彼女を幸福にしたかった
という主人公の吐露が切なく響いた
これは嘘ではなく心の叫だった
純愛と狂気を独自の世界観で描く
暗くて切ない物語でした

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