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こんな人にオススメ
・伏線を楽しみたい
・せつない話が好き
・心理描写を楽しみたい



あらすじ・内容
同棲中の彼女・桃里から無差別殺傷事件
を起こした犯人に似ていると言われた
蒼太はどこが似ているか気になり
殺人犯との類似点を探っていく……
蒼太と桃里が交互に語る二人の日常は
一見平穏に思われたが、次第に不穏な
ものになり蒼太の違う一面が見えてくる
果たして桃里はどうなるのか?
巧みな心理描写で描くミステリー



    



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ネタバレ・感想
アルバイトや派遣で生計を立てている
健気なカップルの日常かと思いきや
全く違う方向に物語が展開して驚いた
Bule(蒼太)とPink(桃里)視点で交互に
描かれていく
前半は二人のすれ違いを上手く描いた
恋愛小説のようだった
しかし、中盤以降は不穏な空気が漂う
先の展開が気になり一気読みだった


蒼太は幼い頃から誰からも愛されず
情緒不安な母親からされた事で心に
闇が出来て人の顔色を伺うようになった
桃里との生活は居心地が良かったが
無差別殺傷事件の犯人・三澤兼人との
共通点を見つけると次第に変わっていく


Pink7では桃里の「臭い」が引き金になり
蒼太が暴走し桃里の首を締めてしまう
桃里と蒼太が気になったがBule8で
桃里が生きていたので良かった


それからは次第に蒼太の過去が
明らかになり可哀想でせつなかった
美人で明るく周りの人が羨む母
しかし、その裏では虐待が横行する
父は他人事で無関心だった
母が一番悪いが父も悪かった
母がおかしくなった原因は描かれて
いないので何とも言えないが父は
何かしらの理由を知ってそうだった
そんな家庭で生活した蒼太に同情した


そして、驚くべき事が・・・
母の呪縛から開放されない蒼太だったが
何と、15歳の時に母親を殺害していた!
幼少期の影響で暴力に支配されていて
蒼太自身も精神的に狂っていた
蒼太も三澤同様に殺人犯だった


しかも、それだけでは終わらない
桃里と付き合う前は母親譲りの容姿を
活かし年上女性とヒモ生活をしていた
その中で蒼太をずっと好きでいてくれた
女性を殺害し山に埋めていた!
その女性の財布がパイソンだった
蒼太は2人の女性を殺していた
桃里の洞察力には鋭く驚いた


そして、ラストにどんでん返しが・・・
桃里は生きていたと思ったが
首を絞められた時に死んでいた!!
死んでいる桃里と普通に生活する蒼太が
狂っていて怖かった((( ;゚Д゚)))ガクブル

読み返したらBule8から桃里は蒼太を
「そーた」と呼んでいない
いくら手が痛いとはいえスマホを蒼太に
操作させていたのには違和感を感じたが
桃里が死んでいたのには気付かなかった


物語は蒼太が桃里の部屋から出ていく
シーンで幕を閉じる
まだ捕まる訳にはいかないと思って
いるので自分の中で“答え”が出るまでは
同じような女性の被害者が増えるだろ
最後まで救いがない展開でつらかった


殺された桃里も可哀想だった
桃里は蒼太から優しく扱われて
愛されていると思っていたが
蒼太には恋愛感情は全く無く桃里が
して欲しい事をしていただけだった
タイトル幻霙とは“幻のみぞれ”
蒼太も桃里も互いに都合の良い幻想を
見ていただけだった
雪でもなく、雨でもない“みぞれ”
蒼太の不安定な精神状態を表現していた


父が蒼太に対して無関心で無ければ…
心を許せる友人が一人でもいれば…
つらく、やるせない読後感で
蒼太の心境そのものだった
Bule、Pink ではなく心の闇が描かれた
“Black ”な物語でした

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