こんな人にオススメ
・一気読みしたい
・難しいテーマが好き
・考えさせられる本を読みたい
あらすじ・内容
息子が不登校になった検事・啓喜
初めての恋に気づく女子大生・八重子
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月
ある事故死をきっかけに、それぞれの
人生が重なり始める
だがその繋がりは“多様性を尊重する時代”
にとってひどく不都合なものだった
あってはならない感情なんてない
それはつまり、いてはいけない人間なんて
この世にはいないということだ
共感を呼ぶ傑作か?問題作か?
読む前の自分には戻れない気迫の長編
2022年本屋大賞5位
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ネタバレ・感想
考えさせられる作品だった
読後はしばらく放心状態だった
三大欲求のうち“性欲”をテーマにして
タイトルでもある“正欲”について
登場人物たちが悩む姿が描かれている
正しい欲とは何か?人それぞれ好みや
価値観があるので本当に難しい
そもそも「正しい」とは何なのか?
本作は“多様性”を認め合おうという
風潮に一石を投じる作品になっている
マジョリティ(社会的多数派)であれば
正しくマイノリティ(社会的少数派)なら
おかしいという現代社会
そもそも、この“多様性”を認めようと
いう風潮がマジョリティになっていて
マジョリティだから正しいという考え
は怖いと思った
「みんな違って、みんないい」という
考えも便利過ぎて、あたかもそれが
正しいと思い込まされていて
深く考える事をしなくなってしまう
この考えが正しいか間違っているか
が問題ではなく、この「考えなくなる」
事が問題だと思い知らされた
とても便利な“多様性”という言葉は
マジョリティ側が一方的に思うだけで
マイノリティ中のマイノリティ側の
考える“多様性”とは大きな差があった
作中の大也の言葉
「自分が想像できる“多様性”だけ
礼賛して、秩序整えた気になって
そりゃ気持ちいいよな──」
これがマイノリティ側の苦しみで
多様性がある社会=生きやすい
という概念が壊された
そして、表紙についての考察
鴨はスピリチュアル的に「呪縛からの解放」
を意味すると言われている
足かせは社会での生きづらさを表す
また、この鴨は飛んでいるのではない
落下しているようにも見えるし
海深くに沈んでのようにも見える
つまり、呪縛から解放されたいと
思いながらも社会的に死んでいる
苦悩を抱えたマイノリティを示していた
「正解」がないので考えれば考えるほど
深い闇の中に落ちていく様を表現している
言葉にできない心の叫びや考えを
鋭く痛烈に描いた作者は凄いと思った
“多様性”を受けいれようと口にしながらも
実際には受け入れていないマジョリティ
自身の浅はかな正義感を“多様性”という
言葉で粉々にされる衝撃があった
読んでいる間は体におもりや足かせ
を付けられているようで苦しかった
モヤモヤするし答えは出ない
読後は読む前の自分には戻れないし
簡単に“多様性”という言葉は使えない
面白くてオススメと言えないが
読んで良かった思える1冊でした
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