
こんな人にオススメ
・静かな恋愛物が好き
・繊細な心理描写を楽しみたい
・島を舞台にした本を読みたい
あらすじ・内容
かつて炭鉱で栄えた離島で、小学校の
養護教師のセイは、画家の夫と暮らしている
奔放な同僚の女教師、島の主のような老婆、
無邪気な子供たち
平穏で満ち足りた日々だったが、ある日
新任教師として赴任してきた石和の存在
が、セイの心を揺さぶる
彼に惹かれていく──夫を愛しているのに
もうこの先がない「切羽」へ向かって
直木賞を受賞した繊細で官能的な恋愛小説

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ネタバレ・感想
井上作品は初読みだった
登場人物の心情をハッキリと描いて
いないし、情熱的な恋愛話でもない
少し物足りない感じがしたが、セイが
石和に惹かれている描写は上手かった
石和はつかみどころがないし、何で
セイが惹かれていくかがわからなかった
夫・陽介の方が魅力的だった
陽介がいるからこそ、ミステリアス
な石和に惹かれていったんだろう
恋愛って好きになるきっかけは様々
だし、本作のテーマはそこではない
余計な描写はなく、淡々と島の人々との
やり取りや、石和との関係を綴っていた
セイと石和の間には性的な描写はないが
終始妖艶な雰囲気や色気があった
タイトル「切羽」とは掘っているトンネル
の一番先のことで、トンネルが繋がれは
切羽はなくなる(一線を超えること)
二人は何事もなく終わったが
“描かない”美しさを感じた作品だった
廃墟化した病院のシーンは切なかった
愛の言葉はないがお互いに惹かれていた
また、3月を書かないのは斬新に思った
文書自体は淡白にもかかわらず
文書の間から濃密さを感じたし
不思議と読ませる力のある一冊だった
結局、石和がどこに行ったか不明だし
どんな性格でどんな人間だったかも
わからなかったが、セイが石和に
どうしようもなく惹かれていたこと
だけはわかった
そして、陽介はセイの気持ちに気付いて
いながらセイを愛していたのは凄い
気付いてないフリをする優しさもいい
物語の中で陽介に一番好感を持った
月江のキャラがとても良かったし
物語のいいアクセントになっていた
セイとは対照的で自由奔放な恋愛
読む人によって色々な解釈ができるし
セイからしたら月江の性格は羨ましく
思っているようにも感じた
石和への気持ちも気付かれていた
月江の存在がブレーキ役になっていたし
月江がいなかったら石和の方へなびいて
いたかもしれない
何か起きそうで起きないのはリアリティ
があったし、静かだからこそ、その中に
ある強い想いを感じた作品だった
舞台はおそらく長崎の離島だなー
平穏な島と揺れる心の対比がいい
アオサの味噌汁が飲みたくなった
ちなみに井上荒野さんの妹の名前
も「切羽」というらしい

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